
翔ける司法書士事務所
代表 中村 翔太郎
司法書士試験に合格し、実務経験を積んだのち、2024年に独立し「翔ける司法書士事務所」を設立。
複雑な相続手続きや、円満な資産承継を実現するための遺言書作成や家族信託業務に精通し、大切な財産を次世代へ確実に引き継ぐ手続きをサポートします。
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[相続登記]
2020年に新設された「配偶者居住権」は、相続時に配偶者が安心して住み続けられるようにする制度です。しかし、仕組みや手続きが複雑でよくわからないという方も多いでしょう。本記事では、配偶者居住権の基本からメリット・デメリット、相続との関係、具体的な設定方法まで解説します。
目次
配偶者居住権とは、自宅を所有していた方が亡くなった後も、その配偶者が亡くなるまで、あるいは一定期間、そのまま自宅に住み続けられるようにするための権利です。
2020年4月に施行された改正民法によって新たに創設されました。これは、特に高齢の配偶者が住み慣れた家を追い出されることなく、安心して暮らし続けられることを目的としています。
従来の相続制度では、自宅が遺産分割の対象となることで、配偶者が住む場所を失ってしまうケースもありました。例えば、他の相続人との間で不動産の分け方に折り合いがつかず、売却を余儀なくされることもあります。こうした事態を避けるために生まれたのが配偶者居住権です。
この制度は、配偶者にとって住居の安定を保証する一方で、不動産を相続する他の相続人にとっても公平な財産分与を可能にするという側面を持っています。つまり、家に住み続けられる権利と、その家の所有権を分けて扱うことで、相続の際のトラブルを防ぐ効果が期待されているのです。
配偶者居住権は相続開始時に自動的に発生するものではなく、一定の手続きが必要です。具体的には、遺言によって指定されるか、相続人全員の協議に基づいて遺産分割協議が行われることで成立します。また、協議が整わない場合は、家庭裁判所の審判によって配偶者居住権が認められることもあります。
この権利は住居として利用している建物に対して成立し、対象となる建物は被相続人が亡くなった時点で配偶者が実際に住んでいたことが条件です。仮に別居していた場合などは、原則として配偶者居住権は認められません。
配偶者居住権が成立すると、その配偶者は一定期間、もしくは終身でその住居に無償で住み続けることができます。ただし、権利が成立した後には法務局への登記手続きが必要となり、登記をしなければ第三者に対抗することができません。つまり、登記を行ってはじめて法的な保護が十分に得られることになります。
このように、配偶者居住権は安心して暮らし続けるために有効な制度ですが、発生には手続きと条件があるため、しっかりと理解しておく必要があります。
配偶者居住権の最大のメリットは、相続発生後も配偶者が安心して住み慣れた自宅に住み続けられる点です。特に高齢の配偶者にとって、生活環境が変わらずに維持されることは、心身の安定にもつながります。また、この権利は不動産の所有権とは別に扱われるため、他の相続人との間で遺産分割を柔軟に行えるというメリットもあります。
さらに、配偶者居住権は評価額が所有権に比べて低くなるため、遺産全体における配偶者の取り分を調整しやすくなります。結果として、家を相続したい相続人と、住み続けたい配偶者の双方の希望を叶えることができ、相続争いの回避にもつながります。
一方でデメリットも存在します。たとえば、配偶者居住権が設定された建物は原則として他の人が住むことも、賃貸に出すこともできないため、建物を相続した人にとっては、買い手が見つからず、処分に困るケースが多くあります。また、登記が必要であることや、権利の評価・管理に手間がかかることもあり、専門的な知識が求められる場面も出てきます。
このように、配偶者居住権は非常に有効な制度である一方で、その活用には理解と準備が必要です。司法書士などの専門家に相談しながら、制度の利点だけでなく注意点も踏まえた上で活用を検討することが重要です。
配偶者居住権を成立させるには、いくつかの方法があります。一般的なのは、被相続人が遺言で配偶者居住権を設定しておくケースです。遺言の中で「配偶者が死亡するまで自宅に居住する権利を与える」と明記されていれば、相続開始と同時にその効力が発生します。
別の方法として、相続人全員による遺産分割協議で合意する方法があります。この場合は、被相続人が遺言を残していなかったとしても、相続人間で話し合いがまとまれば配偶者居住権を設定することが可能です。協議が難航した場合には、家庭裁判所が審判によって配偶者居住権を認めるという方法もあります。
ただし、これらの方法で配偶者居住権が成立したとしても、その権利を第三者に対して主張するためには、法務局への登記が必要です。登記を行わなければ、たとえば不動産の所有者が変更された際などに、配偶者の居住権が保護されないリスクがあります。
この登記手続きは専門的であり、配偶者居住権を確実に守り安心して暮らしを続けるためにも、司法書士に相談することをおススメします。
配偶者居住権は、相続時に配偶者が住み慣れた自宅に安心して住み続けられるよう設けられた重要な制度です。遺言や遺産分割協議、家庭裁判所の審判などを通じて設定でき、他の相続人とのバランスを保ちながら配偶者の生活を守ることが可能になります。
ですが、その仕組みや手続きは専門的で複雑です。手続きの過程で一つでもミスがあると、配偶者居住権が認められなかったり、十分に機能しなかったりするリスクもあります。
また、相続全体のバランスを見ながら配偶者居住権を設定する必要があるため、他の相続人との関係性や不動産の評価額の調整など、専門家のアドバイスが重要です。特に、法務局への登記は必須であり、手続きを怠ると第三者に対抗できないという重大な結果を招く可能性もあるため注意が必要です。
こうしたリスクを回避し、制度を最大限に活用するためには、できるだけ早い段階で司法書士に相談することが大切です。司法書士は法的なアドバイスだけでなく、書類作成や登記手続きの代行まで一貫してサポートしてくれるため、安心して任せることができます。
配偶者の生活の安定を確保するためにも、「まだ早い」と思わず、相続が発生する前からでも司法書士に相談することを強くおすすめします。
配偶者居住権の登記は必ず必要ですか?
はい、配偶者居住権を第三者に主張するためには登記が必要です。登記をしていない場合、住居からの立ち退きを求められる可能性もあります。確実に権利を守るために、必ず法務局で登記手続きを行いましょう。
配偶者居住権は他の相続人との関係に影響しますか?
配偶者居住権は、不動産の所有権とは分けて扱うことができるため、他の相続人とのバランスを取りながら遺産分割が行えます。そのため、配偶者が住み続けられる一方で、他の相続人も不動産の持分を取得するなどの対応が可能になります。
配偶者居住権はいつまで続きますか?
配偶者居住権には「終身型」と「期間限定型」があります。終身型は配偶者が亡くなるまで居住する権利を保障するものです。期間限定型は相続人間の合意や裁判所の判断によって、一定の年数に限って設定されることもあります。どちらの形式にするかは、遺言や協議の内容によって異なります。
配偶者居住権について司法書士に相談するタイミングは?
司法書士への相談は、できるだけ早い段階が理想です。特に遺言の作成を検討している段階や、相続が発生した直後に相談することで、登記手続きや相続人との調整がスムーズに進められます。制度の理解を深め、適切な手続きを確実に行うためにも、早めの相談が重要です。
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